『マルク・シャガール 版にしるした光の詩』展 [散歩]
世田谷美術館で行われている『マルク・シャガール 版にしるした光の詩』展を観てきました。
神奈川県立近代美術館コレクションからの展示です。
この展覧会は8月27日までとなります。
展示室に入ってすぐの、この空間が好きです。今回は鳥の彫刻がふたつ置いてあるだけでした。
人がいない隙にパチリ。。。入口側から撮った方が良かったのですけれどねぇ。
ここから先が今回の展示になります、この後は撮影不可なのでパンフレットをご覧ください。
ゆっくり観ていたら、ちょうど学芸員によるレクチャー「版画家としてのシャガール」が
始まるとのことで、お話しを1時間あまり聞いてきました。
スマホのメモ帳機能を使ってメモしてきました。紙に書くよりも便利ですね!新たな発見^^
今回版画だけの展示になったのは、神奈川県立近代美術館には油絵がなかったこと、
他の美術館から借りることも可能だったが、半分ずつにすると中途半端になるので止めたこと、
版画だけの展覧会は珍しいこと、版画=複製ととられて市場価値は低いが、充分魅力あるものだから、
ということだそうです。
版画集とは、物語やエッセイ、詩と共に版画を楽しむアートブックであり、
出版者の依頼により出版されるので、画家が思いつかないような題材で制作され、
出版者の提案で意外なマッチングが行われ、大喜利のようでもあります。
版画でしか出来ない表現、特性を味わってほしいとのことです。
以下メモしたものを記します。
シャガールについて
80~90年代にたくさんの展覧会を行い有名になった。どの分野にも分類できない独自の道の画家、
愛の画家、色彩の魔術師とも言われている。
1887年帝政ロシア領ヴェテプスクで、ロシア人ユダヤ教徒として生まれた。
この地域は半数以上がユダヤ教徒だったが、
美術学校に入り居住区域制限をされる等の迫害を受けることになる。
1910年パリに渡り、1914年ベルリンで初個展を開いたが妹の結婚式でロシアに戻った時に第一次世界大戦が勃発し
ロシアに留まることになった。美術学校の校長になったが他の教師と対立し追い出されて、
モスクワで絵画教室を開いたそうである。
ベルリンに戻り、35歳で銅版画に出会う。
パリで版画集を依頼されたがフランス国籍迫害を受け、1941年ニューヨークへ亡命する。
そこで舞台美術、緞帳やステンドグラスを手掛けた。
フランスに戻りギリシャ人のテリア―ドの手により版画が出版された。
1966年フランスのニースで国立のシャガール美術館が出来る。生きている間に画家の名前が付いた美術館が
出来たのはここだけ。
1985年97歳で亡くなったが、フランスを代表する画家であり、二番目の奥さんの意向で、
キリスト教のお墓に眠っている。
今回の展示について
『ラ・フォンテーヌ寓話集』1927~30年制作、1952年刊 エッチング
ポーラルの依頼。イソップ物語を題材にしている。100編あり、3年掛かって制作された。
なぜロシア人に依頼したのかが、国会で討論となった。
初め色刷りの予定だったが思うような色が出ず、モノクロ作品となった。
他の画家も挿絵を描いているが、シャガールのものは挿絵として機能させるというよりも、
1枚の絵として表現されていて、切り取り方が個性的である。
光を表現する為に削った後に筆で幕を何度も作り直して白い斑点が出るようにしている。
『馬の日記』 1952年刊 エッチングとリトグラフ(カラー部分)
テーマは労働運動と馬の愛
見開きの1枚の左側に文字、右側に挿絵があり、半分に折ってバインダーに入っている状態。
『悪童たち』1958年刊 エッチングとアクアティント
思い悩む思春期を表現している。魚、山羊、牛をモチーフにして自分自身とも重ねている。
『ダフニスとクロエ』 1957~60年制作 1961年刊 リトグラフ
有名な話しが題材、神話に近い。エーゲ海が舞台でロシア人には馴染のない場所であったが、
シャガールは感動した。
ひとつの作品に対し、普通は5、6枚の版だが、この作品は20~25の版を使っている。
メインカラーを決めて、細かいところに挿し色を施している。
アダムとイヴのイメージ、神様、魚や動物等得意のモチーフを思うまま配置している、抽象画のよう。
挿絵としての機能は弱く絵として鑑賞できる。
『サーカス』 1967年刊 リトグラフ
明るさと悲哀を表現。悲哀では青のイメージで制作。この作品はテキストもシャガールが書いている。
動物好きな為、影の部分の裏舞台も表現している。
『ポエム』 1962~67年制作 1968年刊 木版
80歳で木版画に挑戦した。この作品のテキストもシャガールが書いている。
パリ、ロシア、神への想い、愛着のあるものをモチーフにしている。
ユダヤ教だけではフランスに受け入れられない為キリスト教への愛着もある。
版画だけでなく、コラージュ(別の紙や布を貼り付ける)もされている作品もある。
版画の技法について
「エッチング」
銅版に腐食防止のコーティングをした後、幕を剥がすように絵を描き、酸性の液を流して傷をつける。
その傷の溝にインクが載る。
「アクアティント」
エッチングと同じ手法だが粉を使うのでモアモアした感じ、クレヨンっぽくなる。
「リトグラフ」
溝を付けるのではなく、油と水の性質を利用している。水彩画っぽい表現が出来る。
「木版画」
木版に刃物で溝を彫る。エッチングと逆で彫られていない部分、木目も写る。
版画の技法についての知識がまったくなかったのでレクチャーを受けられて良かったです♪
同時に『雑誌にみるカットの世界』も観てきました。
こちらも撮影不可。『暮らしの手帳』の挿絵が可愛らしかったです。
原画と印刷されたものの違いも見れました。
レクチャーを聞いてお昼ご飯を食べ損なったので美術館内にあるセタビカフェでお茶しました。
頭を使った後は甘いものが美味しい^^
神奈川県立近代美術館コレクションからの展示です。
この展覧会は8月27日までとなります。
展示室に入ってすぐの、この空間が好きです。今回は鳥の彫刻がふたつ置いてあるだけでした。
人がいない隙にパチリ。。。入口側から撮った方が良かったのですけれどねぇ。
ここから先が今回の展示になります、この後は撮影不可なのでパンフレットをご覧ください。
ゆっくり観ていたら、ちょうど学芸員によるレクチャー「版画家としてのシャガール」が
始まるとのことで、お話しを1時間あまり聞いてきました。
スマホのメモ帳機能を使ってメモしてきました。紙に書くよりも便利ですね!新たな発見^^
今回版画だけの展示になったのは、神奈川県立近代美術館には油絵がなかったこと、
他の美術館から借りることも可能だったが、半分ずつにすると中途半端になるので止めたこと、
版画だけの展覧会は珍しいこと、版画=複製ととられて市場価値は低いが、充分魅力あるものだから、
ということだそうです。
版画集とは、物語やエッセイ、詩と共に版画を楽しむアートブックであり、
出版者の依頼により出版されるので、画家が思いつかないような題材で制作され、
出版者の提案で意外なマッチングが行われ、大喜利のようでもあります。
版画でしか出来ない表現、特性を味わってほしいとのことです。
以下メモしたものを記します。
シャガールについて
80~90年代にたくさんの展覧会を行い有名になった。どの分野にも分類できない独自の道の画家、
愛の画家、色彩の魔術師とも言われている。
1887年帝政ロシア領ヴェテプスクで、ロシア人ユダヤ教徒として生まれた。
この地域は半数以上がユダヤ教徒だったが、
美術学校に入り居住区域制限をされる等の迫害を受けることになる。
1910年パリに渡り、1914年ベルリンで初個展を開いたが妹の結婚式でロシアに戻った時に第一次世界大戦が勃発し
ロシアに留まることになった。美術学校の校長になったが他の教師と対立し追い出されて、
モスクワで絵画教室を開いたそうである。
ベルリンに戻り、35歳で銅版画に出会う。
パリで版画集を依頼されたがフランス国籍迫害を受け、1941年ニューヨークへ亡命する。
そこで舞台美術、緞帳やステンドグラスを手掛けた。
フランスに戻りギリシャ人のテリア―ドの手により版画が出版された。
1966年フランスのニースで国立のシャガール美術館が出来る。生きている間に画家の名前が付いた美術館が
出来たのはここだけ。
1985年97歳で亡くなったが、フランスを代表する画家であり、二番目の奥さんの意向で、
キリスト教のお墓に眠っている。
今回の展示について
『ラ・フォンテーヌ寓話集』1927~30年制作、1952年刊 エッチング
ポーラルの依頼。イソップ物語を題材にしている。100編あり、3年掛かって制作された。
なぜロシア人に依頼したのかが、国会で討論となった。
初め色刷りの予定だったが思うような色が出ず、モノクロ作品となった。
他の画家も挿絵を描いているが、シャガールのものは挿絵として機能させるというよりも、
1枚の絵として表現されていて、切り取り方が個性的である。
光を表現する為に削った後に筆で幕を何度も作り直して白い斑点が出るようにしている。
『馬の日記』 1952年刊 エッチングとリトグラフ(カラー部分)
テーマは労働運動と馬の愛
見開きの1枚の左側に文字、右側に挿絵があり、半分に折ってバインダーに入っている状態。
『悪童たち』1958年刊 エッチングとアクアティント
思い悩む思春期を表現している。魚、山羊、牛をモチーフにして自分自身とも重ねている。
『ダフニスとクロエ』 1957~60年制作 1961年刊 リトグラフ
有名な話しが題材、神話に近い。エーゲ海が舞台でロシア人には馴染のない場所であったが、
シャガールは感動した。
ひとつの作品に対し、普通は5、6枚の版だが、この作品は20~25の版を使っている。
メインカラーを決めて、細かいところに挿し色を施している。
アダムとイヴのイメージ、神様、魚や動物等得意のモチーフを思うまま配置している、抽象画のよう。
挿絵としての機能は弱く絵として鑑賞できる。
『サーカス』 1967年刊 リトグラフ
明るさと悲哀を表現。悲哀では青のイメージで制作。この作品はテキストもシャガールが書いている。
動物好きな為、影の部分の裏舞台も表現している。
『ポエム』 1962~67年制作 1968年刊 木版
80歳で木版画に挑戦した。この作品のテキストもシャガールが書いている。
パリ、ロシア、神への想い、愛着のあるものをモチーフにしている。
ユダヤ教だけではフランスに受け入れられない為キリスト教への愛着もある。
版画だけでなく、コラージュ(別の紙や布を貼り付ける)もされている作品もある。
版画の技法について
「エッチング」
銅版に腐食防止のコーティングをした後、幕を剥がすように絵を描き、酸性の液を流して傷をつける。
その傷の溝にインクが載る。
「アクアティント」
エッチングと同じ手法だが粉を使うのでモアモアした感じ、クレヨンっぽくなる。
「リトグラフ」
溝を付けるのではなく、油と水の性質を利用している。水彩画っぽい表現が出来る。
「木版画」
木版に刃物で溝を彫る。エッチングと逆で彫られていない部分、木目も写る。
版画の技法についての知識がまったくなかったのでレクチャーを受けられて良かったです♪
同時に『雑誌にみるカットの世界』も観てきました。
こちらも撮影不可。『暮らしの手帳』の挿絵が可愛らしかったです。
原画と印刷されたものの違いも見れました。
レクチャーを聞いてお昼ご飯を食べ損なったので美術館内にあるセタビカフェでお茶しました。
頭を使った後は甘いものが美味しい^^
いつも思うのですが、他の国の美術館では写真OKのところが多いのに、
なぜ日本では不可が一般的なのでしょうねえ。
たんに前例を踏襲しているだけ?...なんてグチがつい出てしまいます。
エントランスのピクチャーウィンドウきれいですね、ほんと画みたいです。
by ナツパパ (2023-08-16 08:42)
頭を使っていなくても甘いものが美味しい・・・mitu
by mitu (2023-08-16 09:35)
学芸員さんによるレクチャーは
いろいろ裏話が聞けていいですよね。
by リュカ (2023-08-16 12:14)
シャガール 明るくて楽しそうな絵が多いですね
レクチャー メモ書き見て私も勉強になった
アクアチントやエッチングの違い 分かりました。
今まで版画の技法の区別がわからなかったんですよね
ありがとうございます。
by kiyotan (2023-08-16 21:35)
シャガール、名前だけ知ってます(;゚ロ゚)
ニャンコの器がgoodです。
by 横 濱男 (2023-08-17 11:11)
高校の美術の時間にエッチングをやりました。何かなつかしい。
シャガールの絵のイメージは、何となく分かります。
シャガールの絵みたいな文章が書けたらなぁ、なんて思います^^;。
by sakamono (2023-08-17 21:58)
シャガールも暮らしの手帖もどちらも大好き。
猫の器、かわいいですね!
by AKAZUKIN (2023-08-18 12:10)